前回にも触れましたがカーボンニュートラルの達成には莫大な資金が必要です。そこで、前回(1)~(2)の金融支援策を紹介した続編です。
(3)金融:ファンド創設など投資をうながす環境整備
カーボンニュートラル実現のためには、CO2を排出しない再生可能エネルギーの導入に加えて、省エネルギーなどでCO2排出量を減らしていく着実な「低炭素化」、「脱炭素化」に向けた革新的技術への投資が必要です。・10年以上の長期的な事業計画の認定を受けた事業者に対して、経産省主導で長期資金供給の仕組と、成果連動型の「カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援制度」(一定要件を満たせば、利子相当の助成金を受け取ることができ、3年間で1兆円の融資規模)が創設されました。
また、過去記事でも解説しましたが、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFDなどの取り組みを通じて、気候変動に関する企業の積極的な情報開示と引き換えに資金供与をする世界的枠組(国内所管:日本銀行)が動き出しています。
更に重要点は、金融機関・市場が適切に機能する環境整備・ルールづくりです。国内外のESG資金を取り込むため、金融機関の協力体制を構築し、社会課題解決資金調達のための債券発行(通称:ソーシャルボンド)を可能にするなど、カーボンニュートラルに向けた金融システムの整備に取組が予定されています。
(4)規制改革・標準化:新技術が普及するよう規制緩和・強化を実施
研究開発や実証を経て、技術を社会実装しようとした際の課題が規制の問題です。需要を拡大し、新技術の導入をはばむような不合理な規制の緩和、また新技術が世界で活用されやすくなるよう国際標準化の取組。例えば、下記が該当します。・水素を国際輸送する際の関連機器の国際標準化
・再エネが優先して送電網を利用できるような電力系統運用ルールの見直し
・自動車の電動化を推進するための燃費規制の活用
また、CO2に“価格”をつける「カーボンプライシング」をはじめとする、市場メカニズムを用いた経済的手法についても、成長につながるものであれば、既存の制度活用や新たな制度づくりを含めて幅広く検討し、活用していく方針です。(要約すると、先進国が発展途上国の温暖化削減効果を購入するという事ですが・・・。)
(5)国際連携:日本の先端技術で世界をリード
国内の最先端技術で、世界の脱炭素化をリードする事が努力目標にされています。これは、特にエネルギー需要の増加が見込まれるアジアにおいて、原子力・火力発電分野で必要不可欠なものです。米国・欧州との間では、今まで以上の連携や、新興国をはじめとする第三国での共同脱炭素化支援などの個別プロジェクトを推進するほか、技術の標準化や貿易に関するルールづくりが重要となります。
また、アジア新興国との間では、例えば、カーボンリサイクル、水素、洋上風力、CO2回収といった分野での連携や、各国事情に応じた低炭素化へ移行支援の率先、二国間や多国間の協力を進め、これらの国々の脱炭素化に向けた取り組みに貢献し、全世界トータルでの日本のカーボンニュートラル移行完了を目指す方針です。
「グリーン成長戦略」は、このように、国内だけでは解決のしようがないので、アジア新興各国への脱炭素化援助の成功分の国内実績への組込みを意味しています。
さて、ここまで解説した上で、なぜ中国のカーボンニュートラルが2050年から10年遅れの2060年なのか?何となく察しは付きましたね。流石にあの中国でも何もしないわけに行かないので、10年遅れの勝ち馬(効果的手法)に乗ろうというのが戦略なのは想像できるのでないでしょうか。特に中国には国内に十分なカーボンニュートラルへの改善要素がありますから・・・。
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