環境問題オススメ本①『沈黙の春』編

環境問題オススメ本

みなさん、新シリーズ『環境問題オススメ本』を配信します‼
本シリーズでは私が今まで影響を受けた環境問題を題材にした書籍を紹介して行きます。

第1回は伝統的名著『沈黙の春』著:レイチェル・カーソン(米国 1962年刊行)です。
現在は使用禁止されているDDT(ダイオキシン類)系農薬による残留性や生物濃縮がもたらす生態系への影響を公にし、社会的に大きな影響を与えた作品です。
まだ、環境問題を化学的・数量基準的なとらえ方がされていなかった時代に、非常に文学的な表現が印象的な作品です。

「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。みんな不思議に思い、不吉な予感におびえた」「春がきたが、沈黙の春だった。いつもだったら、コマドリ、スグロマネシツグミ、ハト、カケス、ミソサザイの鳴き声で春の夜はあける。そのほかいろんな鳥の鳴き声がひびきわたる。だが、いまはもの音一つしない。野原、森、沼地――みな黙りこくっている」「でも、敵におそわれたわけでもない。すべては、人間がみずからまねいた禍いだったのだ」

本書では、残留農薬による生物個体内の蓄積が食物連鎖により、生態ピラミッドの上位ほど濃縮の影響を受ける現象を明らかにしました。これにより、安全性に問題がある農薬には基準値が定められ、数値的に規制されるような流れにつながりました。このような基準値規制は米国だけでなくて世界中に広がりを見せ、環境問題の化学物質量的規制の源流となりました。

しかし残念ながら、日本史に悪名残る公害、カネミ油症事件は1968年(昭和43年)に発生します。時期としては過去記事【廃棄物処理法の歴史(昭和編)】の夢の島焦土作戦(昭和40年)の直後に当ります。
本事件はカネミ倉庫社製の「ライスオイル(米ぬか油)」製造工程中の脱臭工程において、熱媒体として使用していたPCB類、ダイオキシン類が製品に混入したことによる食中毒事件です。患者の症状は、吹き出物、色素沈着等の皮膚症状、神経症状、関節症状、呼吸器症状など様々に及びました。

歴史にifはありませんが、『沈黙の春』刊行→『カネミ油症事件』の悪い連鎖は、現在の様に一瞬で情報が世界中に拡散される時代であったら防げたのではないでしょうか。

ちなみに、本書は『世界を変えた10冊の本』著:池上彰のにも取り上げられています。
みなさん、ぜひご一読ください。

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