さて、2000年ごろの初動だけは若干他国よりも早かった日本政府、2013年以降、見事にドイツ政府のGSSI戦略に出し抜かれ、ゴボウ抜きされました。国内水産メーカーも水産エコラベル利権にがんじがらめにされ、泣く泣く1,000万円前後の取得費用の負担を強いられる状況に追い込まれました。
そんな日本政府もここに来てようやく重い腰をあげます。
2022年3月25日閣議決定された水産基本計画の中で、
・我が国の水産物が持続可能な漁業・養殖由来である事を示す水産エコラベルの活用に向け、水産加工業者・小売事業者へ働きかけ傘下の水産加工・流通業者による同ラベルの活用を含めた調達方針の策定を促進する。
・国際的なイベント等において我が国水産物の水産エコラベル認証製品を積極的に紹介し、海外での認知度向上を図るととともに、マスメディアやSNSなどの媒体を通じ、国内消費者に対し取組への理解の促進を図る。
・国内で主に活用されている水産エコラベル認証はMSC(イギリス)、ASC(オランダ)、MEL(日本)
と記述されています。
がしかし、GSSIのパートナーであるイオングループの水産エコラベルPR活動には国産の水産エコラベルMELは紹介すらされていません。
AEON TOPVALU:環境への取組
https://www.topvalu.net/brand/kodawari/csr/mscasc/
『調達方針の策定を促進する』、『マスメディア、SNSで理解促進を図る』なんとも曖昧なお役所表現ですが、その意味するところは『まだ全くやれてませんが、これから頑張るつもりです‼』という事です。そもそも問題初期にはイギリスに次ぐ第2番目の取組をしていたのに、ドイツ政府肝いりの、水産ラベル認証を承認する機関GSSIに散々に出し抜かれた割に、問題改善の進捗状況・認知度ともに低すぎるのではないかとの素朴な疑問を持つのは私だけでしょうか?
問題の本質とは、第三者審査制度により経済的に日本の水産業が排除されかけた事のはずなのですが、水産庁の本レポートは
・消費者基本計画により、個々がエシカル消費(社会的課題解決を考慮した消費)に努める事。
・みどりの食料システム戦略により、環境にやさしい持続可能な消費拡大や食育の推進(持続可能な水産物の消費拡大のための水産エコラベル普及推進支援)
まあ、感想としては、「これ以上世界の流れから取り残されないようについて行きましょう‼」という印象ですね。決してトップランナーに追いつこうという姿勢でないのは間違いないでしょう。私はここであえて言いたいのは、そもそも日本の持続可能な漁業問題は世界から遅れていたのか?という事です。平成30年度 水産白書に『日本の水産業の今』という記述があります。学生への水産教育にこれだけ力を入れている国は滅多にありません。その最たる例が近大マグロの養殖に代表されますが、持続可能な漁業についての教育・技術は世界トップレベルです。しかし、残念ながら今回の水産エコラベルやSDGsのような世界的枠組みを先導する力については欧米に遥かに劣るというのが実情です。SDGsで言えば、『目標14:海の豊かさを守ろう』の中で、世間に主に流れる情報は海洋プラスチック問題ですが、問題の本質は漁業の持続可能性です。本来で言えば、日本の漁業持続可能性は他国を圧倒しますが、ニュースには海洋プラスチック問題ばかり注目されます。挙句の果てに、100円回転ずしが10円値上がったのは海洋漁業乱獲問題だと極論を言われる方がいますが、実情は歴史的円安の背景と、富裕化した国に対し漁獲類の買い負けによるものです。日経ビジネス:魚がぜいたく品になる未来 日本が他国に「買い負ける」日に記述されているように、この事実に対して、第三者機関のGSSIの影響力は無影響とは言えなくても、決定的とは言えないレベルです。私は環境至上主義者ではないので、経済と環境問題のバランスが取れたところで着地してくれればと思いますが、現状はかなりSDGsを中心とした環境主義に引っ張られ過ぎな印象を持っています。
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